【世説新語(せせつしんご】 柳川俊之
六朝宋(429~470)の劉義慶によって編纂された、後漢(25~220)~東晋(317~420)の著名人にまつわる逸話集である。「志人小説」(人物の言行を記した書) の代表的作品といわれており、全篇は、「孔門四科」と呼ばれる「徳行」「言語」「政事」「文学」から始まる計三十六のジャンルに分類されている。
当時の俗語や信憑性の低いエピソードを大いに取り入れることによってなされる人物描写は、『史記』などに代表されるそれまでの人物伝とは一線を画している。編纂後まもなくつけられた梁の劉孝標の注によって、史実と異なる記述が多いことがしばしば指摘されているが、歴史書としてよりもむしろ、本書中の随所に感じられる、当時流行した「清談」という哲学議論の気風から当時の知識人社会の様子を知る手がかりとしての存在意義が大きい。また、歴史語法研究の側面からも、当時の語法を研究する上での貴重な資料とされている。