【儒林外史(じゅりんがいし)】 柳川俊之
清代の作家・呉敬梓(ごけいし、1701~1754)が書いた白話文による長編小説で、1750年ごろに完成。科挙制度の下で試験に合格して出世を目指す書生たちの生活を描いた。
時代設定は明代となっているが、実際は本人の実体験に基づいて書かれたものと言われており、清代の康煕帝、乾隆帝の治世社会にはびこった士大夫たちの醜悪な一面を様々な角度から暴露するとともに、科挙制度や「封建礼教」と呼ばれて形骸化していた儒教を批判した。
全55回(後に他の者が追加し56回もしくは60回ともされる)にわたる「章回小説」だが、前後に話のつながりはなく、全編を通した主人公は存在しない。
簡素で生き生きとした口語文を用いて人物像や風景を細やかに描きつつ、富や名声を求めるばかりに偽りや腐敗が蔓延してしまった清代社会を鋭く風刺した作風は、中国古典風刺小説のお手本と呼ばれており、魯迅も高く評価した。また、イギリス・フランス・ドイツ・ロシアなどで翻訳され、中国の科挙制度を理解するための参考書としても重宝されている。