【聊斎志異(りょうさいしい)】 柳川俊之

『聊斎志異』は1680年に完成した清代の短編文言小説集で、作者は蒲松齢(1640-1715)。「聊斎」は蒲松齢の書斎名であり、書名は「聊斎で奇異物語を記す」の意。巷に流れていた口伝の物語を書き記したものとされており、全部で400編以上の物語が存在する。その多くは狐狸や幽霊などが登場する怪談形式となっている。取り上げられている話題は多岐にわたり、化け物を通じて当時の中国社会の様子が反映されている。ストーリーには社会の腐敗への批判や人々の願望が込められているほか、封建倫理や因果応報といった思想論も垣間見ることができる。
同書は当初写本によって広く流布したが、1766年に「青柯亭本」と呼ばれる刻本が刊行されて流通本となった。日本にも速やかに伝わり、芥川龍之介や太宰治が同書の物語をモチーフにした作品を著すなど、多くの近代作家に影響を与えた。手塚治虫も同書からヒントを得た短編漫画を3編残している。

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