【閲微草堂筆記(えつびそうどうひっき】柳川俊之

「閲微草堂筆記」は清朝中期、「四庫全書」の総纂官だった紀昀(きいん)が1789年から1798年にかけて発表した5つの志怪小説集を1800年に合刊したもので全24巻からなる。
 同書は、化け物が登場する怪談や、周囲の人々から聞いた奇譚のほか、上層社会の話や役所の話、人情話や巷の些細な話と幅広いフィールドから集められた。それぞれの物語では、素朴で簡潔な言葉によって当時の社会生活がつづられており、勧善懲悪や因果応報といった含意とともに、封建社会末期における官僚の腐敗や社会の矛盾も暴き出した。このため、発表されるやいなや瞬く間に広まり、「紅楼夢」などと並ぶほどの人気を博し、魯迅も「中国小説史略」の中で「後来その席を奪い得る人なし」とその作風について高く評価した。

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