【傷寒雑病論】柳川俊之
「傷寒雑病論」は後漢から三国時代の医学者、張仲景が著したとされる、中国古代の医学書。後漢末期の混乱期に流行した傷寒という伝染病の治療のための処方について記述した部分と、その他慢性病や婦人病などについて書かれた雑病部分からなっていたが、別々に伝わった。
傷寒部分は「傷寒論」と呼ばれ、西晋、唐など歴代王朝において校訂が行われてきた。現代に伝わるものでは北宋時代に校正出版された「宋版傷寒論」と、南宋に出版された「注解傷寒論」が有名。雑病部分は早くに散逸し行方不明の状態が続いたが、北宋時代に雑病部分の内容が記された「金匱玉函要略方」が発見され、これに校訂、補充を加えた「金匱要略方論」(通称「金匱要略」)が現代に伝わっている。
「傷寒論」「金匱要略」は、現代の中医学、日本漢方いずれにおいても重要な古典テキストとして扱われており、小柴胡湯、小青竜湯、葛根湯などの有名な方剤はいずれも「傷寒論」「金匱要略」を典拠としたものである。