翻訳者としてスタートラインに立つために
今回の記事も引き続き、「翻訳者として仕事をしたい」と考えている方向けの記事になります。
私が翻訳者になろうと思った時にまずやったことは、翻訳者学習者としてのゴールを決めることでした。
ゴールがどこにあるか分からなくて学習を続けるよりも、ゴールがどこにあって、そのゴールに辿り着くためにはどのような勉強をすれば良いかということが分かれば勉強もしやすいと思います。
まず、翻訳学習者と翻訳者の大きな違いは、指定された案件を決められた納期内できちんと仕上げるという点にあります。
(指定された案件というのは、自分の得意分野かもしれないし、苦手な分野もしくは全く未知の分野かもしれません。)
つまり翻訳者として仕事をしたいと考えているのであれば、ある程度色々な案件に対応できる準備(勉強)をしておき、且つ必要最低限の翻訳スピードが備わっていることになります。
では、実際に翻訳者がどのような案件をどのくらいの納期でやっているのかについて書きたいと思います。
例1:中国標準 「電気自動車用電池管理システムの技術条件」 意見募集稿
http://www.catarc.org.cn/upload/201810/12/201810121636360291.pdf
注意:サイト上から引用したものであり実際の案件ではありません(実際に依頼されそうな案件)。
例えば上記案件の場合、
文字数:約8200文字(中国語原文)
*通常は3~4日くらいの納期が提示されると思われます。
この案件は中国における電気自動車推進のために制定が進められている推奨性国家標準制定(法規)に関するものです。
(ある程度中国の自動車業界事情、自動車の電池管理システムに関する知識が必要)
例2:多国籍企業の江蘇省における地域本部・機能型機関設立の奨励に関する意見
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/express/pdf/R419-0504-XF-0105.pdf
*みずほ銀行の中国ビジネスエクスプレスレポートという記事を引用しています。過去数十本の記事があり、仮日本語訳もありますので勉強するのにはとても良い材料だと思われます。
文字数約4000文字(中国語原文)
*納期は2日~3日を提示されると思います。
(この記事は中国の金融政策等の知識が必要だと思われます)
例3:全固体電池に関するトヨタ自動車の特許
https://patentimages.storage.googleapis.com/d2/b1/09/3238259beb7750/JP2010135090A.pdf
文字数約20,000字(日本語原文) 日→中訳
*納期は1週間位を提示されると思います。
(この文書は特許に関する知識や、電池に関する基本的な知識が必要になります)
他にもネット上に多くのニュース案件など勉強のネタになる材料が沢山ありますので色々な分野の文書を自分で数本翻訳してみると良いと思います。自分で訳してみてどのくらいの時間がかかるのかを計測し、もし十分に対応可能であればトライアルを受けてみても良いと思います。もし、時間がかかりすぎるのであれば、その分野の基本的な知識が足りないから翻訳スピードが遅いのか、それとも単純にタイピング速度が遅いのか、その原因をきちんと把握して、その点を改善する勉強をする必要があります。
参考:一般的に翻訳会社が求める1日の処理量 2000~3000文字(中国語原文)
《参考資料》
[翻訳者の仕事の簡単な流れ」
①翻訳会社のトライアル(※)を受ける
※トライアルとは翻訳会社が翻訳者になるレベルか判断するテスト
↓
②トライアルに合格すれば採用
↓
③翻訳会社はその翻訳者にあった案件があれば打診(単価と納期を提示)
↓
④翻訳者は納期や単価を確認し、受けるか、断るかを返信
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⑤依頼を受ける場合
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⑥翻訳会社が翻訳者にデータを送付(翻訳会社がパスワード付で圧縮して送付又は翻訳者が翻訳会社の専用サイトに接続してダウンロード)
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⑦指定されたフォーマットや注意事項などを確認して翻訳開始
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⑧納期までに仕上げて、担当者へ送付もしくは専用サイト上にデータをアップロード
↓
⑨チェッカーによるチェック
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⑩翻訳者へフィードバック
↓
⑪確認し再納品