論説体翻訳のティップス〔2〕
まーくん
論説体を正確に訳す為にはまず、文意を正確に読み取る必要があります。その手段の一つが文構造を分析し正しく捉えることです。本連載二回目では、これについて例文に基づいてお話していきます。
例文1
在欧美一些国家,大学生通过信用卡或银行贷款,买手机和电脑的 比率 很高。
修飾句① 修飾句② 主語 述語
(試訳)欧米の一部の国では、大学生がクレジットカードや銀行ローンを利用して携帯やパソコンを購入する割合が高い。
[解説]この文の主述の要部は“比例很高”(比率が高い)です。他の部分は全て限定修飾語です。冒頭の“在欧美一些国家”は文全体を限定修飾しています。“大学生买手机和电脑的”は“比例”を連体修飾し、“通过信用卡或银行贷款”は“买”を連用修飾します。
このような関係を、たとえば「修飾句をかっこでくくる」、「主述関係を下線や矢印で示す」などの工夫をすると、間違いなく訳すことができます。これをするためには、原文をプリントアウトしたり、タブレットを利用したりして手書きできるようにするのが便利です。
例文2
《伟大的转折》 深入挖掘遵义会议和长征精神的内涵,用思想的光芒烛照新时代的征程。
主語 述部① 述部②
(試訳)『偉大な転換』(注)は遵義会議と長征の精神の意味合いを深く掘り下げ、新時代が歩む道筋を思想という光で明るく照らしている。
【注】テレビドラマの題名
[解説]文は“逗号”すなわちカンマで前半、後半に分かれていますが、主語はともに“《伟大的转折》”です。《 》は日本語の『 』同様、書名などを表します。
前半の述部①の要部は“挖掘内涵”(動詞+目的語)、“遵义会议和长征精神的”は目的語“内涵”の連体修飾語、“深入”は“挖掘”に対する連用修飾語です。
後半の述部は“烛照新时代的征程” (動詞+目的語)。“用思想的光芒”は、これに係る連用修飾句です。連用修飾句は、それが係る用言に近いところへ移すとわかりやすい訳文になります。
例文3
他无法通过拥抱新中国来 把自己变得“革命” 。
修飾句
(試訳)彼は、新中国を受け入れることで自身を革命的(な人間)に変えることができなかった。
[解説]文の主述要部は“他无法把自己变得‘革命’”です。“通过拥抱新中国来”は“把自己变得‘革命’”(ここは把構文で、「自分を革命的な人間に変える」ということです)を連用修飾をしています。“变得 ‘革命’”の部分は状態補語が使われていて、“革命”は補語ですので形容詞として働いています。こういう語は日本語にするとき「的」をつけるとよいでしょう。
例文4
黄金 被看成 是能支配友情这种精神世界的力量。
主語 述語 補語
(試訳)お金は、友情など情誼の世界をも支配できる力であるとみなされている。
[解説]文の要部は“黄金被看成”。“被”のある受動態の文です。“是能支配友情这种精神世界的力量”は“看成”(みなす)の補語。“是……的力量”(……は~の力である)という枠の中に、入れ子状に“能支配+目的語”(……を支配できる)という“力量”を連体修飾する句があり、さらにその中に“友情这种”(友情といった)という小さい句がはいっていて、これは“精神世界”を修飾しています。
今日のまとめ
今回の事例は全て文法的に分析できるものでしたが、文によっては文脈、語感から判断するしかない文構成もあります。そのような例も含め、また紹介したいと思います。